エンジニアの退職理由の伝え方|言い換え例と伝える相手別の注意点
エンジニアの転職活動では、面接官に退職理由を聞かれる場面と、現職の上司に退職の意思を伝える場面の両方で、何をどう話すか迷う人が多くいます。本音の不満をそのまま口にすると評価が下がったり、客先常駐のSESエンジニアなら常駐先との関係が気まずくなったりするおそれもあります。この記事では、退職理由をネガティブにせず伝える言い換えの型を、立場や伝える相手ごとの事情に分けて解説します。合わせて、退職理由を伝える法律上の義務の有無や、引き継ぎ期間の目安も確認します。
退職理由の伝え方に関する転職支援会社の解説記事と、厚生労働省の統計、各調査会社の公表データを確認して書いています。確認できない数値は掲載せず、2026年10月19日時点で確認できた情報にもとづいています。実在する個人の転職体験談は含みません。
エンジニアの転職で退職理由の伝え方が重要な理由
退職理由の伝え方が重要なのは、面接官がその答えから「同じ理由で自社もすぐ辞めないか」と「転職先で何を実現したいのか」という2点を確認しているためです。退職理由そのものの内容より、不満をどう次の行動につなげて話しているかという組み立て方のほうが評価に影響するとされています。ネガティブな事実を隠す必要はありませんが、伝え方を工夫しないと準備不足や不満が多い人という印象につながりかねません。
面接官が退職理由から確認したい2つのこと
転職エージェントの解説では、面接官は退職理由そのものより「同じ理由でまた辞めないか」という再発リスクと、「転職先の環境でその希望を実現できるか」という適合度を見ているとされています。不満を隠さず伝えつつ、応募先でどう解決できるかを添えると、懸念を払う答え方になるとされています。
- 同じ理由で早期に離職するリスクの有無
- 不満や課題を自分の工夫で変えようとしたかどうか
- 転職先の環境・制度で希望が実現できる見込み
- 退職理由と志望動機のつながりに矛盾がないか
退職理由と転職理由の違い
退職理由は「前職をなぜ辞めるか」、転職理由は「次にどこで何をしたいか」を指し、似ていますが整理する軸が異なります。退職理由だけで話を終えると不満の表明にしかならず、転職理由とセットで語ることで、前向きな行動として伝わりやすくなります。面接前にこの2つを別々に書き出しておくと、話す内容が整理しやすくなります。
退職理由と転職理由を1枚のメモに並べて書き出しておくと、面接中に矛盾した説明をするリスクを減らせます。
ネガティブな退職理由をポジティブに言い換える型
退職理由の多くは給与・人間関係・残業・キャリアの不一致のいずれかに当てはまり、不満をそのまま話すのではなく「次にどうしたいか」という前向きな表現に言い換えるのが共通する基本方針です。複数の転職支援サイトの解説が共通して勧めているのは、不満の事実を消すのではなく、同じ事実を志望理由に結びつけて言い換える方法です。以下では、本音の退職理由としてよく挙がる項目を、NGな直接的な伝え方と言い換え例に分けて整理します。
給与・評価への不満の言い換え
パーソルキャリアが運営するdodaの調査では、退職理由の本音ランキングで「給与が低い・昇給が見込めない」が4年連続で1位となっており、2023年7月から2024年6月に転職した人を対象にした回答割合は33.6パーセントでした。給与そのものを理由にすると引き留め交渉になりやすいため、評価制度や成果が反映される仕組みへの関心として言い換える方法が勧められています。
人間関係・社風への不満の言い換え
厚生労働省「雇用動向調査」(令和2年)では、その他の理由(出向等を含む)を除くと、女性の転職入職者が前職を辞めた理由の最多は「職場の人間関係が好ましくなかった」(13.3パーセント)でした。人間関係の不満をそのまま話すと「トラブルがあるとすぐ辞める人」という印象につながるおそれがあるため、チームでの連携を重視したいという前向きな言い方に変える方法が解説記事で共通して勧められています。
| 本音の退職理由 | NGになりやすい伝え方 | 言い換え例 |
|---|---|---|
| 給与・評価への不満 | 給与が低いので辞めます | 成果が評価に反映される環境で働きたいです |
| 人間関係・社風の不一致 | 上司や同僚と合いませんでした | チームで連携しながら成果を出せる環境を探しています |
| 残業・働き方への不満 | 残業が多くて辞めたいです | 業務に集中して成果を出せる働き方を実現したいです |
言い換えの目的は「不満を隠すこと」ではなく「同じ事実を前向きな行動に変えて伝えること」です。事実そのものを作り変える必要はありません。
本音を消す必要はありません。「不満→次にどうしたいか」の順で話すと、同じ事実でも前向きな印象に変わります。
SES・客先常駐エンジニア特有の退職理由の伝え方
SES(システムエンジニアリングサービス)として客先常駐で働くエンジニアは、退職理由を「自社の上司」「常駐先の担当者」「転職先の面接官」という3つの相手に、異なる立場を踏まえて伝える必要がある点が、正社員として1社で働くエンジニアと異なります。案件や常駐先を自分で選べないことへの不満は、転職支援サイトの解説でもSESの辛さの一因として挙げられており、伝え方を誤ると自社と常駐先の双方との関係に影響するおそれがあります。
案件が選べない・常駐先が合わないときの伝え方
常駐先の業務内容や相性が合わないという不満は、自社の上司には案件のミスマッチとして具体的に伝えつつ、転職の面接では「希望する技術領域に集中したい」という前向きな言葉に言い換えるのが基本的な整理です。案件そのものへの不満を面接官にそのまま話すと環境への適応力を疑われるおそれがあるため、どの技術・役割に挑戦したいかという軸で話すほうが伝わりやすいとされています。
客先に先に伝えてしまうリスクと伝える順番
客先常駐の退職に関する相談事例では、常駐先の担当者に先に退職の意向を伝えてしまい、自社との間で話がこじれたケースが確認できます。退職の意思は、雇用契約を結んでいる自社の上司に先に伝え、常駐先への伝達は自社の判断とタイミングに委ねるのが基本的な順番です。就業規則で定められた申告期間も、自社の規則に従って確認する必要があります。
- まず雇用契約を結んでいる自社の上司・人事に意思を伝える
- 常駐先への伝達方法とタイミングは自社と相談して決める
- 就業規則に定められた退職の申告期間を事前に確認する
- 客先への引き継ぎ資料は自社の指示に沿って準備する
| 立場 | 伝える相手 | 伝え方の注意点 |
|---|---|---|
| 正社員エンジニア | 転職の面接官 | 不満は言い換えて志望動機に結びつける |
| 正社員エンジニア | 現職の上司 | 不満より退職の意思の固さと引き継ぎへの協力を重視 |
| SES客先常駐エンジニア | 常駐先の担当者 | 自社の判断とタイミングに委ね、自分から先に伝えない |
| SES客先常駐エンジニア | 自社の上司 | 案件・常駐先への具体的な不満を先に伝えて相談する |
常駐先の担当者に先に退職を伝えると、契約上の調整が自社の把握していないまま進んでしまうことがあります。伝える順番を守ることが円満な退職につながります。
現職の上司に退職理由を伝えるときの注意点
現職の上司に退職理由を伝える場面は、転職の面接とは目的が異なり、円満に退職日を決めることが主な目的になります。上司への伝え方では、不満をすべて話すことよりも、退職の意思が固いことを明確に示し、引き継ぎに協力する姿勢を見せることのほうが重視されるとされています。本音の不満を伝えるかどうかは、職場に残った後の関係も踏まえて判断する必要があります。
退職理由を詳しく話す義務はない(民法627条)
期間の定めのない雇用契約の場合、民法627条1項により労働者は理由を示さずに退職を申し入れることができ、会社の承諾がなくても申し入れから2週間で退職の効力が発生すると、厚生労働省のQ&Aで説明されています(2026年10月19日確認)。就業規則で「1か月前までに申し出ること」のように定めている企業もありますが、法律上は民法の規定が優先するという解説が労働局のQ&Aで示されています。
本音の不満を伝えないという判断もある
株式会社ハッカズークの調査では、1年以内に退職したビジネスパーソン574人のうち88パーセントが「会社に伝えなかった本音の退職理由がある」と回答しており、理由として「伝えても理解されない・改善されないと思った」という回答が多く挙がっています。本音を全て話す義務はなく、引き継ぎと円満な退職日の調整に支障が出ない範囲で、話す内容を選んでよいという考え方が調査結果からも読み取れます。
- 退職の意思が固いことを示す一言を最初に伝える
- 引き継ぎのスケジュールの見通しを自分なりに用意しておく
- 話す内容を「不満」と「前向きな理由」に分けて整理する
- 就業規則に定められた退職の申告期間を事前に確認する
上司への伝え方で悩んだら「不満を全部話すこと」ではなく「円満に退職日を決めること」を目的に置き直すと、話す内容を選びやすくなります。
エンジニアの引き継ぎ期間の目安と進め方
引き継ぎ期間について労働基準法に定めはなく、就業規則で定めた期間が目安になりますが、転職情報サイトの解説では1か月前後を目安にする記事が多く、担当システムの規模によっては1〜3か月を見込むという解説もあります。退職の申告期間と引き継ぎに必要な期間は別の概念で、就業規則の申告期間だけでは引き継ぎが終わらない場合は、早めに上司へ相談する必要があります。
引き継ぎ期間が長くなりやすい業務の特徴
担当しているシステムの仕様書や設計書が整備されていない場合や、後任者が新規採用・異動で確保されるまでに時間がかかる場合は、引き継ぎ期間が1か月では収まらないことがあります。後任が決まっていない状態で退職日だけを先に確定させると引き継ぎが尻切れになりやすいため、後任のアサイン状況を上司に確認しながら期間を決める進め方が勧められています。
引き継ぎ書に残すべき項目
エンジニアの引き継ぎ書は、業務マニュアルと異なり、進行中の案件や前任者ならではの注意点を含めるのが特徴だと解説されています。担当システムの仕様書・設計書の修正、障害時のエスカレーション先、過去のトラブルと対応方法を書面に残すと、口頭だけの引き継ぎより伝え漏れを減らせます。
- 担当システムの仕様書・設計書の最新版への修正
- 定例作業・リリース手順などの作業手順書
- 障害発生時のエスカレーション基準と連絡先
- 取引先・関係部署ごとの対応履歴や配慮事項
- 進行中の案件の現状と残タスク
| 期間の種類 | 目安 | 根拠 |
|---|---|---|
| 法律上の最短期間 | 申し出から2週間 | 民法627条1項(期間の定めのない雇用) |
| 就業規則上の目安 | 1か月前までの申し出が多い | 各企業の就業規則(法的義務ではない) |
| 実務上の引き継ぎ目安 | 1〜3か月(システム規模による) | 転職情報サイトの解説記事 |
退職理由を伝えるときのNGパターン
退職理由のNGパターンは、話す内容そのものより話し方の構造で整理すると分かりやすくなります。不満をそのまま並べる伝え方と、本当の理由を隠すための嘘をつく伝え方の2つが、複数の解説記事で共通して指摘されるNGパターンです。どちらも面接官や上司に「隠している」「誠実でない」という印象を与えるおそれがあります。
そのまま不満をぶつける言い方
給与や人間関係への不満をそのまま話すと、面接では評価を下げる要因になり、上司に話す場面でも引き留めの材料に使われたり関係が気まずくなったりするおそれがあります。不満の事実を消すのではなく、その先に何をしたいかという行動に結びつけて話すことで、同じ事実でも受け取られ方が変わります。
嘘をついて取り繕う言い方
本当の理由を隠すために全く別の嘘をつくと、入社後の経歴確認や会話の中で矛盾が生じるリスクがあります。事実を言い換えることと、事実と異なる嘘をつくことは別物で、解説記事の多くは言い換えは勧める一方で嘘は避けるべきだと指摘しています。
- 給与や人間関係への不満をそのまま並べて話す
- 本当の理由と異なる作り話をする
- 当たり障りのない理由だけで終え、企業研究不足に見える
- 自信なさげに話し、何かを隠していると疑われる
言い換えと嘘は別物です。事実を前向きな言葉に変えるのはよいですが、事実そのものを作り変えるのは避けましょう。
よくある質問
エンジニアの転職における退職理由の伝え方について、検索でよく調べられている質問をまとめました。相手が面接官なのか現職の上司なのか、正社員なのかSESの客先常駐なのかによって注意点は変わるため、ここでは個別の状況によって事情は変わる前提での一般的な考え方として回答しています。以下は2026年10月19日時点で確認した情報にもとづいており、実在する個人の転職体験談は含まれていません。
退職理由は面接でどこまで正直に話すべきですか
不満の事実を隠す必要はありませんが、不満だけで終わらせず、転職先でどう解決したいかという前向きな内容とセットで話すのが基本です。給与や人間関係への不満はそのまま伝えるより、評価制度への関心やチームでの働き方への希望といった言葉に言い換えると、同じ事実でも受け取られ方が変わります。本当の理由と異なる嘘をつくことは避け、言い換えの範囲で正直に話す姿勢が勧められています。
SESの客先常駐で退職理由をどう伝えればいいですか
常駐先の担当者と自社の上司では、伝えるべき内容と順番が異なります。まず雇用契約を結んでいる自社の上司に退職の意思と理由を伝え、常駐先への伝達方法とタイミングは自社の判断に委ねるのが基本的な順番です。常駐先に先に退職の意向を伝えてしまうと、自社が把握していないまま話が進み、契約上の調整が後手になるおそれがあります。
退職理由を会社に正直に言わなくてもいいのですか
期間の定めのない雇用契約では、民法627条1項により労働者は理由を示さずに退職を申し入れることができます。本音の不満を全て話す法律上の義務はなく、調査でも退職者の多くが本音の理由をすべて伝えていないと回答しています。ただし、引き継ぎや退職日の調整に必要な情報は伝える必要があり、理由を話さないことと引き継ぎに協力しないことは別の問題として扱う必要があります。
引き継ぎ期間はどのくらい確保すればいいですか
就業規則に定められた退職の申告期間(多くは1か月前後)を基準にしつつ、担当システムの規模や後任者の確保状況によっては1〜3か月程度に延ばす判断が必要になる場合があります。後任が決まっていない状態で退職日だけを先に決めてしまうと引き継ぎが終わらないことがあるため、後任のアサイン状況を上司に確認しながら期間を相談する進め方が勧められています。
まとめ
エンジニアの転職で退職理由を伝えるときは、不満の事実を隠すのではなく、面接官や上司など伝える相手に応じて「次にどうしたいか」という前向きな言葉に言い換えることが基本になります。SES・客先常駐のエンジニアは、自社の上司・常駐先の担当者・転職の面接官という3つの相手に、伝える順番と内容を分けて整理しておくと、立場特有のトラブルを避けやすくなります。
面接での退職理由の伝え方をさらに詳しく確認したい場合はSESの転職理由と面接対策の記事を、退職理由と合わせて聞かれやすい逆質問を確認したい場合は面接の逆質問の例をまとめた記事を参考にしてください。システムエンジニアの面接対策全般はシステムエンジニアの転職面接記事でも解説しています。転職に関するほかの記事は転職カテゴリの記事一覧でご覧いただけます。