データエンジニアの年収は中央値でいくらか、公的統計から確認する
データエンジニアの年収を調べると「平均534万円」という数字がよく出てきますが、出典を示した記事はほとんどありません。知りたいのは中央値なのか平均なのか、その数字が誰を対象にしたものかという点です。この記事では、民間サイトの数字の出どころを検証し、厚生労働省の統計にデータエンジニアという職種区分があるかを確認したうえで、経験年数別の目安とデータサイエンティストとの違いまで整理します。
公的統計と一次情報にあたって記事を書いています。この記事ではデータサイエンティスト協会の公式資料と厚労省job tagを2026年10月9日に確認しました。出典不明の年収額は断定していません。
データエンジニアの年収「534万円」の中身を確認する
検索で頻繁に見かける「データエンジニアの年収は534.6万円」という数字は、複数の転職コラムで平均値として紹介されています。中央値ではありません。さらに調査の実施主体や対象者数が本文に書かれておらず、一次データを確認できませんでした。経験年数別やITSSレベル別の数字も同じ記事群で使われており、まずはこの数字の出どころを検証します。
この534.6万円という数字は、転職エージェントが運営する複数のページで同じ文言とともに繰り返し登場します。同じ数字が別サイトへそのまま転載されている可能性が高く、独立した調査結果が複数存在するわけではありません。出典の示されていない数字を比較材料にするのは危険です。
複数サイトで同じ数字が使われている理由
転職コラムは検索上位を取るために、同じテーマの記事を複数のドメインで展開することがあります。結果として534.6万円のような数字が、調査主体の異なる記事であるかのように複数箇所で引用されます。一次調査が1つも示されておらず、数字の信頼性を検証する手段がありません。
平均と中央値を混同してはいけない理由
平均値は合計を人数で割った値、中央値は年収順に並べて真ん中に来る値です。年収の分布は上側に少数の高年収層が長く伸びるため、平均は中央値より高く出やすくなります。534.6万円が平均なら、実際の中央値はこれより低い可能性があります。この区別を無視すると、自分の年収を誤って評価してしまいます。
- 534.6万円は複数の転職コラムに共通する数字で一次調査が確認できない
- 平均値と中央値は分布が偏っているほど差が大きくなる
- 出典のない数字は自分の年収評価の基準にしない
- 母集団(誰を対象にした数字か)が書かれていない記事は参考程度にとどめる
- 公的統計で裏付けできる数字だけを判断材料にする
検索で見かける「平均534.6万円」は、出典を明示した一次調査ではありません。同じ数字が複数の転職コラムで繰り返し使われているだけで、調査主体も対象者数も分かっていません。
同じ数字が複数のサイトに出てくると信頼できそうに見えますが、転載なら母数は1つのままです。
厚生労働省の統計に「データエンジニア」という区分はあるか
厚生労働省の賃金構造基本統計調査の職種区分を確認した範囲では、データエンジニアという項目名は見当たりませんでした。近い区分として、ソフトウェア作成者やシステムコンサルタント・設計者、その他の情報処理・通信技術者があります。新しい職種ほど統計の整備が追いついていない典型例といえ、実務に近い行を選んで確認する必要があります。
この調査は厚生労働省が実施し、職種・年齢・学歴・経験年数などの属性別に賃金を公表しています。どの職種にも対応する行があるわけではなく、新しい職種名ほど統計の区分に反映されていないことがあります。データエンジニアはその典型例です。
賃金構造基本統計調査の職種小分類を確認する
e-Stat(政府統計の総合窓口)で賃金構造基本統計調査を開き、職種(小分類)の一覧を見ると、情報処理・通信技術者の中にいくつかの行があります。ただしそこにデータエンジニアという名称は含まれていません。確認は無料で、誰でもe-Statの統計表一覧からたどれます。
厚労省job tagという別の公的ページがある
厚生労働省は職業情報提供サイト「job tag」(日本版O-NET)も運営しており、データエンジニアという職業ページが別名「ビッグデータエンジニア」として存在します。都道府県別の求人賃金や有効求人倍率の統計欄があり、賃金構造基本統計調査とは別の角度から職業の実在を確認できます。
| 実務のイメージ | 近い統計上の区分 | 備考 |
|---|---|---|
| データ基盤の構築・運用 | その他の情報処理・通信技術者 | 公式な一致ではなく実務内容から見た近さ |
| 要件定義・設計寄りの業務 | システムコンサルタント・設計者 | システムアナリスト等も含む分類 |
| 実装中心の業務 | ソフトウェア作成者 | プログラマー・社内SEも含む分類 |
| 職業としての実在確認 | 厚労省job tag「データエンジニア」ページ | 別名ビッグデータエンジニア |
- 賃金構造基本統計調査にデータエンジニアという項目名は見当たらない
- 近い区分はソフトウェア作成者・システムコンサルタント・設計者など
- 厚労省job tagにはデータエンジニアという職業ページが別途ある
- 統計上の職種名と実務の呼び方は一致しないことが多い
- 統計表の区分は改定されることがあるので確認のたびに最新版を見る
経験年数・年代別に見る年収の目安
20代や未経験者の年収を検索すると、民間の転職サイトやコラムの数字しか見つかりません。公的統計にはデータエンジニアという区分が無いため、年代・経験年数別の公式な中央値は確認できていません。検索の需要が特に大きいこの2つの段階について、見つかった数字と、その数字が何を根拠にしているかを、あわせて具体的に整理して示します。
20代のデータエンジニアの年収の目安
ある人材紹介会社の自社データベースでは、年代別の年収は40代以降が最も高く、20代は40代より100万円以上低いとされています。この数字は同社に登録した利用者の集計であり、全国のデータエンジニア全体を代表する値ではありません。登録者という母集団の限定を理解したうえで読む必要があります。
未経験からデータエンジニアになった場合の年収の目安
未経験可の求人を確認すると、提示年収には幅があり、同じ求人でもエンジニア経験者を歓迎する条件が併記されていることがあります。未経験者向けの統計的な中央値は見つかりませんでした。入社時の条件は求人票ごとに前提が異なるため、個別に確認する以外に確実な方法はありません。
| 出典 | 対象者 | 示されている数字 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 転職コラム群 | 不明(調査主体の記載なし) | 平均534.6万円など | 一次調査を確認できない |
| 人材紹介会社の自社データ | 同社サービスの登録者 | 平均558万円・年代別の傾向 | 登録者に限定された母集団 |
| 厚労省job tag | 求人票に基づく統計 | 都道府県別の求人賃金欄 | データエンジニア単体の金額は本文で未確認 |
- 年代別・経験年数別の公式な中央値は確認できていない
- 民間の数字は調査主体や対象者数が書かれていないことが多い
- 人材紹介会社のデータは登録者という限定された母集団である
- 未経験可の求人はエンジニア経験者歓迎と併記されることがある
- 気になる求人は年収の内訳(みなし残業・賞与の有無)を確認する
ここで紹介した経験年数別・年代別の金額は、調査方法が確認できない民間サイトの数字です。断定的な判断の材料にせず、求人票や面談で得られる条件を優先してください。
20代だから低い、未経験だから低いと決めつける前に、その数字が誰のデータなのか確認する習慣をつけましょう。
データサイエンティストとの年収・職務の違い
データエンジニアとデータサイエンティストは、名前は似ていますが担当業務が異なります。データエンジニアはデータを集めて使える形に整える基盤づくりが中心、データサイエンティストはそのデータを分析して意思決定に使う示唆を出す仕事です。業界団体の定義でも、両者は別の職種として明確に分かれているわけではありません。
職務の違い
データエンジニアは、データベースの設計や、データを集めて加工するパイプラインの構築・運用を担います。データサイエンティストは、集まったデータを統計や機械学習の手法で分析し、ビジネス課題への示唆を出します。データエンジニアが整えた基盤の上でデータサイエンティストが分析するという補完関係にあります。
協会の定義ではデータエンジニアリング力はスキルの1つ
一般社団法人データサイエンティスト協会の公式スキルチェックリストは、データサイエンティストを「データサイエンス力とデータエンジニアリング力をベースに価値を生み出す専門職」と定義しています。協会の定義では、データエンジニアリング力はデータサイエンティストに必要な3分野のスキルの1つという位置づけです。データエンジニアという独立した職種区分は、この一次資料には存在しません。
- データエンジニアはデータ基盤の構築・運用が中心
- データサイエンティストはデータの分析と意思決定支援が中心
- 協会の定義ではデータエンジニアリング力は3分野のスキルの1つ
- データエンジニアという独立した職種定義は協会の資料に存在しない
- 求人票の業務内容を見て、どちらの比重が大きいか確認する
| 項目 | データエンジニア | データサイエンティスト |
|---|---|---|
| 主な業務 | データ基盤の構築・運用 | データ分析と意思決定支援 |
| 必要スキルの例 | SQL・クラウド・ETL設計 | 統計学・機械学習・説明力 |
| 業界団体の位置づけ | 独立した職種定義は確認できない | データエンジニアリング力を含む3分野で定義 |
| 年収の公式な中央値 | 確認できていない | 確認できていない(民間数字のみ) |
似た名前の職種でも、見るべきスキルと担当範囲は違います。求人票の業務内容を確認しましょう。
データエンジニアの年収ランキングを読むときの注意点
データエンジニアの年収ランキングを検索しても、日本企業を対象にした公的なランキングは見つかりませんでした。出てくるのは職種全体の水準や、海外企業の一例が中心です。ランキングという見せ方自体が集計方法によって結果を大きく変えるため、何を対象に、どのように集計したものかを、記事を読む前に先に確認しておく必要があります。求人票の情報とサービス登録者のデータでは、同じ職種でも出てくる順位が入れ替わることがあります。
何を数えたランキングかを確認する
ランキングには、求人票の提示額を集計したもの、転職サービスの登録者データ、口コミサイトの自己申告額など複数の種類があります。集計方法が違えば、同じデータエンジニアでも出てくる順位は変わります。タイトルだけでなく、調査方法の説明を確認してください。
企業別の数字は有価証券報告書でも職種別には出ない
上場企業の有価証券報告書には従業員の平均年間給与が記載されますが、これは全社員を対象にした数字で、データエンジニアだけを抜き出した職種別の数字ではありません。企業別の年収を正確に知りたい場合は、採用ページの求人票や面談で提示される条件を直接確認するほうが確実です。
- ランキングの集計対象(誰のデータか)を確認する
- 求人票ベースのランキングは募集時点の期待値に近い
- 有価証券報告書は職種別の年収を示さない
- 口コミサイトの自己申告額は裏付けが取れない
- 企業別の実額は採用ページや面談で確認するのが確実
| 出典の種類 | 集計対象 | 見るときの注意 |
|---|---|---|
| 求人票の提示額 | 募集中のポジション | 採用を強化している案件ほど高く出やすい |
| 転職サービスの登録者データ | そのサービスの利用者 | サービスの利用者層に偏る |
| 口コミサイトの自己申告 | 投稿した個人 | 自己申告のため裏付けが無い |
| 有価証券報告書 | 企業の全従業員 | 職種別の数字ではない |
ランキングを比較するときは、同じ出典・同じ集計方法のものだけを並べてください。出典が違うランキングを混ぜて順位を比べることに意味はありません。
年収の情報を転職の判断にどう使うか
出典を確認した年収の情報を、転職活動の中でどう使うかが最後の論点です。出典が確認できない数字を目標にするのではなく、求人票に書かれた条件や、自分の経験年数に近い情報を基準にすることが実用的です。相場の数字は、転職で何を改善したいかを考えるための出発点として使うのが、もっとも現実的な使い方になります。同じ年収表示でも、内訳によって実際の支給額は変わります。
自分の経験年数とスキルレベルに近い行を選ぶ
年収の情報を見るときは、全体の平均ではなく、自分の経験年数や担当業務に近いデータを選んでください。データパイプラインの構築経験、クラウドの実務経験、分析チームとの協業経験など、担当範囲によって評価されるスキルは変わります。自分の経験に最も近い条件の数字を探すことが、相場を知るうえでの近道です。
求人票の金額を読み替える
求人票の年収欄には、みなし残業代や想定賞与が含まれている場合があります。同じ600万円でも、残業代別途支給の求人と、みなし残業45時間込みの求人では実態が異なります。応募前に、その金額に何が含まれているかを確認してください。書かれていなければ、面談で質問して構いません。
- 全体の平均ではなく自分の経験に近い数字を基準にする
- 求人票の金額にみなし残業代や賞与が含まれるか確認する
- データ基盤構築とデータ分析のどちらの業務が中心かを明確にする
- 出典が明記された数字だけを比較材料にする
- 気になる条件は面談で直接質問する
| 場面 | 使う情報 | 注意点 |
|---|---|---|
| 自分の立ち位置を知る | 経験年数・業務内容が近い求人の条件 | 出典が明記されたものを選ぶ |
| 転職先の相場を見る | 求人票の提示年収 | みなし残業・賞与の扱いを確認 |
| 職種の境界を整理する | データサイエンティスト協会の定義 | データエンジニアリング力は3分野の1つ |
| 市場全体の話をする | 民間コラムの平均値 | 個人の判断材料には使わない |
数字そのものより「誰のデータか」「何を含む金額か」を確認する習慣のほうが長く使えます。
よくある質問
データエンジニアの年収の中央値について、検索でよく調べられている疑問をまとめます。民間の数字は出典が確認できないものが多いため、断定を避けた回答にしています。統計や職業情報は毎年更新される可能性があるため、2026年10月9日時点で確認できた情報にもとづいていることを、あらかじめご了承ください。回答に使っている数字や定義は、本文で出典を示したものに限っています。
データエンジニアの年収の中央値はいくらですか
公的統計から確認できる中央値は、2026年10月9日時点では見つかりませんでした。厚生労働省の賃金構造基本統計調査にはデータエンジニアという職種区分が見当たらず、中央値を示す公式な数字がありません。検索で見かける534.6万円などの数字は平均値として紹介されており、しかも調査主体が明記されていないため、中央値の代わりとして使うことはできません。
データエンジニアとデータサイエンティストはどちらが年収が高いですか
公式な統計で両者を比較できる数字がないため、どちらが高いと断定することはできません。民間サイトの数字では、データサイエンティストの方が高めに紹介される傾向がありますが、調査方法が異なるため単純比較はできません。業界団体の定義でも、データエンジニアリング力はデータサイエンティストに必要なスキルの1つとして扱われており、両者の境界は職種というよりスキル分野として整理されています。
未経験からデータエンジニアを目指す場合、年収はどれくらいから始まりますか
求人票を見る限り、未経験可の案件は条件に幅があり、エンジニア経験者を歓迎する条件が併記されることも多くあります。公的統計に基づく未経験者向けの中央値は確認できていません。正確な金額を知るには、応募を検討している求人票の条件を個別に確認するか、面談で直接質問することをおすすめします。
厚生労働省の統計でデータエンジニアの年収を調べる方法はありますか
賃金構造基本統計調査には該当する職種区分が見当たらないため、近い区分(ソフトウェア作成者やシステムコンサルタント・設計者など)の数字を参考にする方法があります。別の方法として、厚生労働省が運営する職業情報提供サイト「job tag」には、データエンジニアという職業ページが別名ビッグデータエンジニアとして存在し、都道府県別の求人賃金のデータを確認できます。
まとめ
データエンジニアの年収を調べると、よく534.6万円という数字が出てきますが、これは出典の確認できない民間サイトの平均値です。中央値として扱うのは誤りで、厚生労働省の統計にもデータエンジニアという職種区分は見当たりませんでした。近い区分の数字を参考にする以外に、公式な中央値を知る方法は、今のところ確認できていません。
一方で、厚労省job tagにはデータエンジニアという職業ページがあり、データサイエンティスト協会の公式資料はデータエンジニアリング力をスキルの1分野として定義しています。これらの一次情報を踏まえると、出典のない数字をそのまま信じるより、自分の経験年数に近い求人票の条件を確認するほうが確実です。
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