SESからWeb系への転職は難しい?自社開発企業への進み方を解説
SESで働きながら「Web系の自社開発企業に移りたい」と考えたとき、多くの人がまずぶつかるのは「難しいと聞くが実際はどうなのか」という疑問です。SESとWeb系企業は契約形態も評価の軸も違うため、同じ「エンジニア」でも準備すべき内容は変わります。この記事では両者の違い、転職が難しいと言われる理由、求人票の見分け方、ポートフォリオと学習量の目安、志望動機の伝え方までをまとめて解説します。
SESからWeb系企業への転職について、転職支援メディアの解説記事やSNS・知恵袋の声、厚生労働省の統計にあたって書いています。SESという業態単独の年収統計は公的機関から公表されていないことを2026年9月28日に確認しました。個人の転職体験談は掲載していません。
SESとWeb系企業の違い(契約形態と開発体制)
SESは自社の社員をクライアント先に常駐させ、技術力や労働時間を提供する準委任契約が中心の業態です。対してWeb系企業の多くは自社サービスを持ち、少人数のチームで企画から運用まで一貫して関わるアジャイル開発が中心になります。同じ「エンジニア」という肩書きでも、日々の仕事の進み方や求められる姿勢はかなり異なるため、転職前に整理しておく価値があります。
契約形態と開発体制の違い
SESでは案件ごとに常駐先が変わり、開発手法や使用technology stackも常駐先の方針に合わせることになります。Web系の自社開発企業では、自社サービスを長期にわたって少人数のチームで育てていく形が一般的で、担当領域を自分で広げていく裁量が大きくなります。この裁量の大きさが「レベルが高い」と言われる背景の一つです。
働き方と評価軸の違い
SESでは客先の評価がそのまま社内評価に反映されやすく、常駐先が変わるたびに人間関係を築き直す負担があります。Web系企業では指示を待つより自ら課題を見つけて動く姿勢が評価されやすく、業務外でも技術をキャッチアップし続ける前提で評価制度が組まれていることが多いとされています。評価される行動の種類が違うと理解しておく必要があります。
- SESは準委任契約、Web系自社開発は業務委託・正社員雇用が中心
- SESは客先常駐、Web系は自社オフィスまたはリモートが中心
- SESはウォーターフォール型、Web系はアジャイル型の開発が多い
- SESは案件ごとに技術スタックが変わる、Web系は自社の技術に習熟していく
- SESは客先評価が中心、Web系は自走力や提案力が評価されやすい
「Web系」という言葉は自社開発・受託開発・制作会社まで幅広く使われます。求人を見るときは、まず自社サービスの有無で絞り込むと混乱しにくくなります。
SESからWeb系への転職が難しいと言われる理由
難しいと言われる主な理由は、上流工程に関わる機会が少ないことと、案件ごとに担当領域が変わり専門性を説明しにくいことです。ただし実際にSESからWeb系の自社開発企業へ転職しているエンジニアもおり、対策次第で難易度は下げられるという指摘が複数の情報源で共通しています。難しさの正体を分解すると、準備すべきことが具体的に見えてきます。
上流工程の経験が少ない壁
SESでは実装やテストなど下流工程の案件に配属されやすく、要件定義や設計といった上流工程に関わる機会が限られる傾向があります。面接で「設計の経験はありますか」と聞かれたときに具体的なエピソードを示しにくいのは、この配属の偏りが背景にあります。担当した業務を工程ごとに分解して振り返る作業が対策の出発点になります。
専門性を説明しにくい構造
SESは案件が変わるたびに使用する言語やフレームワークが変わりやすく、一つの技術領域を深める時間を確保しにくい構造になっています。その結果、職務経歴書に書ける内容が案件の羅列になり、Web系企業が見たい「何を継続して深めてきたか」が伝わりにくくなります。業務時間外の学習で技術領域を一つ選び、継続した記録を残すことが差になります。
| 難しさの要因 | 背景 | 対策の方向性 |
|---|---|---|
| 上流工程の経験不足 | 下流工程への配属が多い | 部分的に関わった設計・要件整理を掘り起こす |
| 専門性の説明しにくさ | 案件ごとに技術が変わる | 業務外で1領域を継続して深める |
| 自走力の証明不足 | 指示ベースの業務が多い | 個人開発やOSS参加で行動を示す |
「難しい」という言葉だけで諦める前に、自分がどの要因でつまずいているのかを表で確認すると、次にやることがはっきりします。
求人票で自社開発・受託・隠れSESを見分けるチェックリスト
「Web系」を掲げる求人の中には、実態が客先常駐のSESという「隠れSES」が混ざっていることがあります。求人票の勤務地・雇用形態・必須スキルの書き方には契約形態ごとの傾向差があるため、応募前に確認する軸を決めておくと見分けやすくなります。次の表に、確認すべき項目と契約形態ごとの記載傾向をまとめました。
自社開発・受託・SESの記載パターン
勤務地の欄に「客先常駐」「常駐先による」と書かれていればSESの可能性が高く、「自社オフィス」「フルリモート可」と具体的に書かれていれば自社開発の可能性が高くなります。必須スキルが「何らかの開発経験」のように抽象的な求人はSES、特定の言語やフレームワークを名指ししている求人は自社開発である傾向が強いとされています。1項目だけで判断せず、複数の項目を重ねて確認します。
| 確認項目 | SES寄りの記載 | 自社開発寄りの記載 |
|---|---|---|
| 勤務地 | 客先常駐、常駐先による | 自社オフィス、リモート可 |
| 必須スキル | 何らかの開発経験(抽象的) | 特定言語・フレームワークを明記 |
| 雇用形態 | 正社員と契約社員・BPを併記 | 正社員のみ |
| 社内制度 | 帰社日・報告会の記載がある | プロダクト名・開発体制の記載がある |
面接で契約形態を確認する質問
求人票だけで判断がつかない場合は、面接や面談の場で契約形態を直接確認するのが確実です。「配属先は自社サービスの開発チームですか」「入社後に客先常駐になる可能性はありますか」と具体的に聞けば、あいまいな回答かどうかで判断材料が増えます。逆質問の一つとして事前に用意しておくと聞き逃しません。
- 配属先は自社サービスの開発チームか
- 入社後に客先常駐になる可能性はあるか
- 使用する技術スタックは入社前に確定しているか
- チームの人数と役割分担はどうなっているか
- 評価は誰が、何を基準に行うか
「Web系」という言葉だけで安心せず、勤務地・必須スキル・雇用形態の3点を必ず突き合わせて確認しましょう。1点だけの一致で判断すると隠れSESを見落とします。
転職準備でやること、ポートフォリオと学習量の目安
Web系の自社開発企業への転職では、実務経験だけでなく、自分で考えて作ったものをどれだけ示せるかが評価されます。実務経験が3年以上あってもポートフォリオが無いと開発意欲が伝わりにくいという指摘があり、SES出身であっても業務外の制作物が選考の判断材料になります。何を作り、どう伝えるかを準備の中心に置きます。
ポートフォリオに入れる要素
ポートフォリオは完成度の高さよりも、自分で考えて工夫した点を説明できるかどうかが重視されます。Webアプリケーションやツールをひとつ作り、GitHubでコードを公開したうえで、設計判断の理由を自分の言葉で語れるようにしておくことが評価につながるとされています。作った量より、説明できる深さを優先します。
- 企画から実装まで自分で考えたWebアプリケーション
- GitHubで公開しているソースコードとREADME
- 設計判断の理由を書いた開発記録
- 使用した技術スタックとその選定理由
- 今後改善したい点の言語化
学習時間と応募社数の目安
SESから自社開発企業へ転職した個人の公開体験談を見ると、学習時間や応募社数には幅がありますが、共通して数百時間規模の学習と数十社規模の応募が語られています。たとえばエンジニア歴3年・30代で117社に応募し922時間学習したという記録や、独学と業務外の制作を重ねて転職したという記録が公開されています。1件の体験談を基準にせず、幅として捉えるのが現実的です。
| 項目 | 公開体験談に見られる目安 | 前提条件 |
|---|---|---|
| 学習時間 | 数百時間規模(900時間超の例あり) | 業務外での独学・制作の合計 |
| 応募社数 | 数十社規模(100社超の例あり) | 書類選考から内定までの合計 |
| 準備期間 | 数ヶ月〜1年規模 | 在職しながらの並行準備を含む |
この目安は公開されている個人の体験談を集計した参考値であり、公的な統計ではありません。人によって現在のスキル水準や希望条件が異なるため、幅の下限を目標にしつつ、状況に応じて調整してください。ポートフォリオの具体的な作り方は、ポートフォリオの作り方を解説した記事で工程ごとに整理しています。
応募数や学習時間の数字に一喜一憂するより、今の自分に足りない要素は何かを表から逆算する使い方をおすすめします。
転職理由と志望動機の伝え方
SESからの転職理由をそのまま話すと、環境への不満が中心の人だと受け取られて評価を下げることがあります。面接官が知りたいのは辞めたい理由そのものより、次の環境で何を実現したいかという再現性の低い動機かどうかです。不満を隠す必要はありませんが、話す順番と言葉の選び方を、面接の前に一度整理してから臨む必要があります。
評価を下げやすい伝え方
「客先常駐に疲れた」「案件がころころ変わって専門性が身につかない」という理由をそのまま伝えると、環境要因だけが転職理由だと受け取られやすくなります。環境が変わっても同じ理由で辞めるのではと懸念されやすいという指摘は、複数の転職支援メディアで共通しています。不満の裏にある「次に求める条件」まで言葉にする作業が対策になります。
| そのまま話すと伝わりにくい理由 | 言い換えの方向性 |
|---|---|
| 客先常駐に疲れた | 一つのプロダクトに継続して関わりたい |
| 案件が変わり専門性が身につかない | 特定の技術領域を継続して深めたい |
| 上流工程に関われない | 企画段階から意思決定に関わりたい |
面接で使える言い換えの型
言い換えの型は「事実の指摘」ではなく「次に求める状態」を主語にすることです。「◯◯が不満だった」ではなく「◯◯できる環境で力を発揮したい」という語順にすると、同じ内容でも前向きな動機として伝わりやすくなります。この型は志望動機とポートフォリオの説明の両方に使えます。面接で評価を下げやすい伝え方の詳しいパターンは、面接の失敗パターンを整理した記事でも扱っています。
- 「不満だった」ではなく「実現したい」を主語にする
- 環境要因だけでなく自分の行動とセットで語る
- 志望動機とポートフォリオの説明の一貫性を確認する
- 逆質問を3つ以上用意しておく
- スキルシートの記載を工程ごとに分解しておく
年収を比較するときに注意すべき点
SESとWeb系企業の年収差を語る記事は多くありますが、SESという業態単独の年収を集計した公的統計は見当たりませんでした。求人サイトが独自に集計した平均値を国の統計と混ぜて比較している記事も見られるため、数字の出どころを必ず確認する必要があります。ここでは断定を避け、確認の仕方と考え方の軸を示します。
平均値と中央値を混同しない
平均値は一部の高年収者に引っ張られて実感より高く出やすく、中央値は全員を並べたときに真ん中に来る人の値です。厚生労働省の賃金構造基本統計調査では、社内システムエンジニアやプログラマーは職種分類上「ソフトウェア作成者」に区分され、システムコンサルタントは別区分になります。統計上の職種名は普段の呼び方と違うため、引用時に取り違えないようにします。中央値と平均値の違いや確認手順は、年収の中央値を確認する方法を解説した記事にまとめています。
自社開発との待遇差を見る軸
SESと自社開発企業の待遇差は、会社の規模やフェーズによって大きく変わるため、業態だけで単純に比較できません。中小規模のスタートアップの自社開発とSESでは差が小さいケースがある一方、上場済みの大手Web系企業では差が広がりやすいという指摘があります。求人票の年収レンジと会社の規模・フェーズをあわせて見る習慣をつけます。
- 求人サイト独自の集計か、国の統計かを区別する
- 平均値と中央値のどちらを見ているかを確認する
- 会社の規模・上場の有無・事業フェーズを確認する
- 年収レンジの下限が自分の現在の年収を上回るか確認する
- 年収以外の裁量・業務範囲もあわせて比較する
「Web系のほうが年収が高い」と一律に信じるのは危険です。求人サイトの平均値と国の統計の中位数を混ぜて比較している記事もあるため、必ず同じ指標どうしで比べてください。
よくある質問
SESからWeb系への転職に何年の経験が必要ですか
必要な年数を一律に決めた公的な基準はありません。求人によっては実務経験が浅くても、業務外で作ったポートフォリオと技術領域への理解を評価されて選考が進むケースがあります。経験年数そのものより、担当した業務を工程ごとに分解して説明できるか、業務外の学習量を示せるかが判断材料になりやすいとされています。年数を気にする前に、まず経験の棚卸しから始めることをおすすめします。
未経験でもWeb系の自社開発企業に転職できますか
開発未経験からいきなり自社開発企業に転職するのは難易度が高く、多くの場合はSESや受託開発で実務経験を積む経路が現実的とされています。ただし「未経験歓迎」のSES求人はテスターや運用保守など補助的な業務から始まることが多いため、入社後にどの工程を経験できるかを面接で確認しておく必要があります。求人票の言葉だけで判断せず、実際の業務内容を確認してください。
SESから転職する場合、退職のタイミングはいつがよいですか
案件の切れ目や契約更新のタイミングは、次の常駐先が決まる前に転職活動を進めやすい時期の一つです。案件参画中でも、業務時間外にポートフォリオ制作や書類準備を進めておけば、案件終了のタイミングで動き出せる状態を作れます。退職の意思表示は、次の内定が固まってから行うのが安全です。
Web系に転職すると年収は上がりますか
会社の規模やフェーズによって差が大きいため、一律に「上がる」とは言えません。上場済みの大手Web系企業では待遇が上がりやすい一方、立ち上げ間もないスタートアップではSESと差が小さいケースもあると指摘されています。年収だけでなく、担当できる業務範囲や裁量の大きさもあわせて比較することをおすすめします。
まとめ
SESからWeb系の自社開発企業への転職は、契約形態と評価軸の違いを理解し、求人票を複数の軸で確認し、ポートフォリオと言い換えの準備を積み上げれば、難易度を下げて進められます。年収や学習量の数字は出どころを確認し、1件の情報を鵜呑みにせず幅として捉えることが遠回りを避ける近道です。異業種からの転職や面接対策など隣接するテーマは、SESから異業種への転職を解説した記事もあわせて参考にしてください。