エンジニアリングマネージャー転職の年収相場 調査元で前提が違う
エンジニアリングマネージャー(EM)への転職を調べると、「年収900万〜1200万円が目安」という解説記事と、「2000万円台」の求人票が同時に見つかり、混乱しやすい状況があります。これは、人材サービス各社の想定年収、転職エージェントの成約データ、求人票の提示額という、算出方法も対象者も違う複数の数字が区別なく並んでいるために起きています。この記事では、各調査元がどの前提(パーセンタイル・企業規模・母集団)で数字を出しているかを整理し、2000万円台の求人の実態と、未経験からの転職条件まで確認します。
公的統計と求人票にあたって記事を書いています。この記事ではRobert Half Japanの職種別想定年収と賃金構造基本統計調査の統計表を2026年10月21日に確認しました。出典不明の年収額は断定していません。
エンジニアリングマネージャーの年収相場 調査ごとに前提が違う
エンジニアリングマネージャーの年収相場は、調査元によって900万円台から1500万円台まで幅があります。これは対象者のレベルが違うからではなく、算出方法そのものが違うためです。人材サービスのRobert Half Japanはパーセンタイル別の想定年収を示し、IT特化型の転職エージェントGeeklyは自社の成約データから平均と中央値を公表しています。どちらも公的統計ではなく、民間企業が独自に集計した数字である点を先に確認してください。
パーセンタイル別の想定年収
Robert Half Japanの試算では、エンジニアリングマネージャーの全国想定年収は25パーセンタイルで1200万円、中央値にあたる50パーセンタイルで1350万円、75パーセンタイルで1550万円です。この数字には賞与や福利厚生が含まれていません。25パーセンタイルは経験が浅くスキルを習得中の層、75パーセンタイルは高度な経験を持つ層と位置づけられています。
成約データの平均と中央値
Geeklyのコラムでは、同社の成約データに基づくエンジニアリングマネージャーの平均年収が約682万円、中央値が650万円、最高額が1000万円と示されています。この数字は同社のサービスを利用して転職した人の実績であり、母集団は同社の登録者に限られます。年代が上がるほど平均・中央値が高くなる傾向があるとも説明されています。
| 調査元 | 算出方法 | 対象 | 示されている数字 |
|---|---|---|---|
| Robert Half Japan | パーセンタイル(25/50/75) | 転職市場全体の想定(賞与含まず) | 1200万〜1550万円 |
| Geekly | 自社成約データの平均・中央値 | 同社経由で転職した人 | 平均682万円/中央値650万円 |
| Kotora | 相場の目安(ラベル不明) | 開発経験とマネジメント経験がある人材 | 900万〜1200万円 |
| 求人票(各社) | 募集時点の提示額 | 検索時点で募集していたポジション | 600万〜2000万円程度まで幅 |
- Robert Half Japanのパーセンタイル表示は賞与・福利厚生を含まない
- Geeklyの数字は同社の成約データに限られる
- Kotoraの900万〜1200万円は平均・中央値のラベルが明示されていない目安
- 求人票の提示額は検索時点の募集ポジションに限られる
- 同じ年収という言葉でも対象集団が違う
900万円と1500万円、どちらも正しいのは見ている集団が違うからです。まず数字の出どころを確認しましょう。
エンジニアリングマネージャー年収2000万円は実在するか
検索すると、年収1200万〜2000万円という求人票が見つかりますが、これは一般的な相場ではなく上限を示すレンジ求人が中心です。東京都内のある企業の求人では、同じ職種で1200万円から2000万円という幅と、別の箇所で1000万円から1500万円という記載が併記されており、同一求人内でも数字が一致しない例がありました。2000万円台は特定の条件を満たすポジションの上限と捉えるのが実態に近いといえます。
2000万円台が出る求人の条件
確認できた求人票を見ると、2000万円に近い金額を提示するポジションには共通点があります。事業の中核を担う技術責任や、大規模な開発組織のマネジメントを前提とする求人が多いという点です。募集企業の規模や扱う事業領域によって、同じ肩書きでも提示額の帯が大きく変わります。
- 大規模な開発組織の統括を前提とする求人
- 事業の中核を担う技術責任を求める求人
- 外資系企業や大手の事業会社の求人
- 経営層に近い意思決定への参加を求める求人
VPoEと比べた場合の目安
同じRobert Half Japanの試算では、VP of Engineering(エンジニアリング部門の責任者)の中央値は1800万円、25から75パーセンタイルで1500万〜2500万円とされています。エンジニアリングマネージャーの中央値1350万円よりも高い帯にあり、2000万円という数字はEMよりもVPoEに近いレンジだと分かります。肩書きを求人票で確認することが欠かせません。
2000万円という数字を見たときは、募集ポジションがエンジニアリングマネージャーなのか、より上位のVP of Engineeringやエンジニアリング部門長なのかを、求人票の役職名と業務内容で確認してください。
エンジニアリングマネージャーの業務範囲と権限
エンジニアリングマネージャーの業務は、ピープルマネジメント、採用と組織づくり、技術面の意思決定の3つに大きく分けられます。チームが継続して成果を出す責任を担う点が本質であり、1on1や評価、育成といった人と組織に関わる業務が中心になることが特徴です。プロジェクトマネージャーのように特定のプロジェクトの終了とともに役割が終わるわけではなく、チームが存在する限り関与が続きます。
ピープルマネジメントの比重
1on1による面談、評価、育成はエンジニアリングマネージャーの中心業務です。採用活動や組織づくりも担当範囲に含まれ、技術面の意思決定は他のマネージャーと分担するケースも多いとされています。1人がすべての業務を担うわけではない点に注意してください。
評価権限は会社によって異なる
評価や採用に関する権限の範囲は、会社によって差があります。エンジニアリングマネージャーが単独で評価権限を持つ組織もあれば、人事部門や上位のマネージャーと協力して評価を行う組織もあります。転職時には、評価や採用の責任をどこまで持つのかを、求人票や面談で具体的に確認する必要があります。
- ピープルマネジメント(1on1・評価・育成)
- 採用と組織づくり
- 技術面の意思決定(技術的負債の解消など)
- プロダクトやビジネス側との調整
- 評価権限の範囲は会社によって異なる
肩書きが同じでも、評価権限や採用責任の有無で仕事の実態が変わります。面談で具体的に聞いておきましょう。
未経験からエンジニアリングマネージャーに転職できるか
未経験からいきなりエンジニアリングマネージャーとして転職する例は多くありませんが、可能性が無いわけではありません。JAC Recruitmentの解説では、一般的に5年以上のエンジニア経験に加え、チームリーダーやプロジェクトリーダーなどのマネジメント経験が求められるとされています。一方で、エンジニアリングマネージャーの経験者は市場全体で不足しているため、経験そのものが無くてもポテンシャルを見込んで採用する企業があるとも説明されています。
求められる経験年数の目安
求人票や解説記事を確認すると、エンジニア経験5年以上を目安にする求人が目立ちます。マネジメント経験そのものが無くても、チームリーダーやテックリードとして技術面をまとめた経験は評価の対象になるとされています。経験年数だけでなく、チームの意思決定にどう関わってきたかが問われます。
ポテンシャル採用という選択肢
EM経験者が市場全体で不足していることから、企業は求める要件に近いスキルや成長の可能性を持つエンジニアも積極的に採用する姿勢を示しているという解説があります。未経験からEM候補として採用されたあと、実際の職務のなかで評価や採用の経験を積んでいく道筋も一つの選択肢です。
| 経験の種類 | 一般的な求人の傾向 | 備考 |
|---|---|---|
| エンジニア経験 | 5年以上を目安にする求人が多い | 実装経験の年数 |
| マネジメント経験 | チームリーダー・テックリード経験で代替できる例がある | 部下を持たない形の経験でも評価対象 |
| EM経験そのもの | 必須としない求人がある | EM候補としてのポテンシャル採用 |
- エンジニア経験5年以上を目安にする求人が多い
- マネジメント経験はチームリーダー経験などで代替できる場合がある
- EM経験者は市場全体で不足している
- 未経験でもEM候補として採用される例がある
- 面談では意思決定への関わり方を具体的に説明する
経験年数の数字だけでなく、チームの意思決定にどう関わったかを言葉にできるかが選考で見られています。
公的統計にエンジニアリングマネージャーの区分はあるか
厚生労働省の賃金構造基本統計調査を確認した範囲では、エンジニアリングマネージャーという名称の職種区分は見当たりませんでした。近い大分類として管理的職業従事者があり、令和5年調査では所定内給与(月額・常用労働者計・男女計)が54.9万円でした。これは管理職全体を含む大分類の数字であり、エンジニアリングマネージャー単体の数字ではありません。新しい職種ほど統計の整備が追いついていない典型例といえます。
管理的職業従事者という大分類の数字
賃金構造基本統計調査の職種(大分類)には管理的職業従事者という区分があり、令和5年調査では月額の所定内給与が54.9万円でした。この数字は業種・職種を問わず管理職全般を集計したものです。年収に換算した公式な数字でもなく、賞与や残業代を含まない月額の数字である点にも注意してください。
厚労省job tagでの確認結果
厚生労働省が運営する職業情報提供サイト「job tag」で検索した範囲では、エンジニアリングマネージャーという名称の職業ページは見当たりませんでした。近い職務として、システムエンジニアやITコンサルタントの職業ページが確認できます。公的な職業情報としては、エンジニアリングマネージャーという名称そのものがまだ定着していないと考えられます。
| 実務のイメージ | 近い統計上の区分 | 備考 |
|---|---|---|
| 人材育成・組織運営が中心 | 管理的職業従事者(大分類) | 業種・職種を問わない集計 |
| 技術選定や設計への関与 | システムコンサルタント・設計者 | ITコンサルタントに近い分類 |
| 職業としての実在確認 | job tagに該当ページなし | システムエンジニア等で代替検索 |
公的統計にエンジニアリングマネージャー単体の数字はありません。管理的職業従事者という大分類の数字を使う場合は、管理職全般の数字であることを前提に扱ってください。
年収を左右する企業規模とチーム規模
エンジニアリングマネージャーの年収は、管理する人数や企業の成長段階によって大きく変わります。Kotoraの解説では、同じEMでも部下が数人のチーム責任者と、複数の管理職を率いる部門責任者では、求められる能力と責任が異なると指摘されています。JAC Recruitmentは、SaaS系スタートアップやメガベンチャーでEM候補のポジションが広がっていると説明しています。
管理人数と採用責任の有無
管理する部下の人数が増えるほど、期待される役割は人材育成や組織設計に比重が移ります。採用の最終責任を持つかどうかも、提示される年収に影響する要素の一つとされています。小規模なチームの責任者としてEMを始める場合と、複数チームを統括する場合では、評価の基準が変わります。
成長段階で変わる求人の広がり
JAC Recruitmentの解説では、SaaS系スタートアップやメガベンチャーなど、事業が急成長している企業でEM候補のポジションが増えていると説明されています。資金調達後の拡大期にある企業では、組織づくりを担える人材の採用需要が高まりやすい傾向があります。
- 部下の人数が増えるほど人材育成・組織設計の比重が増す
- 採用の最終責任を持つかどうかで評価が変わる
- SaaS系スタートアップでEM候補の求人が増えている
- メガベンチャーでも同様の採用ニーズがある
- 企業の成長段階によって求められる役割が変わる
EMという同じ肩書きでも、管理する人数や採用責任の有無で求められる役割は大きく変わります。
年収情報を転職活動に使うときの注意点
年収の情報を転職の判断に使うときは、出典ごとに母集団と算出方法が違うことを前提にする必要があります。Robert Half Japanのパーセンタイル表示、Geeklyの成約データ、求人票の提示額は、それぞれ別の集団を数えた数字です。数字そのものより、誰のデータで何を含む金額かを先に確認する習慣のほうが、長く使える判断材料になります。
出典ごとに母集団が異なる
Robert Half Japanの数字は転職市場全体を想定したパーセンタイル表示、Geeklyの数字は同社を利用して転職した人に限られる成約データです。公的統計には、エンジニアリングマネージャー単体の数字が存在しません。3種類の出典を同じ土台で比較すると実態を見誤るため、自分の状況に近い出典をまず選んでください。
賞与や株式報酬の有無を確認する
求人票に記載された年収には、賞与や株式報酬が含まれているかどうかが明記されていない場合があります。Robert Half Japanの試算も賞与・福利厚生を含まない数字だと明記されています。提示された金額が月給の12倍の年俸なのか、賞与を含む想定年収なのかを、面談で具体的に確認する必要があります。
| 場面 | 使う情報 | 注意点 |
|---|---|---|
| 自分の立ち位置を知る | 経験年数・管理人数が近い求人の条件 | 出典が明記されたものを選ぶ |
| 転職先の相場を見る | 求人票の提示年収 | 賞与・株式報酬の有無を確認する |
| 2000万円台の真偽を見る | 求人票の役職名と業務内容 | VP of Engineeringなど上位職でないか確認する |
| 市場全体の話をする | Robert Half JapanやGeeklyの集計 | 個人の判断材料には使わない |
- 出典ごとに母集団と算出方法が異なる
- 賞与・株式報酬の有無を明記した数字かを確認する
- 2000万円台は役職名も併せて確認する
- 公的統計にEM単体の数字は存在しない
- 自分の経験年数に近い出典を基準にする
年収の数字を見たら、まず出典が公的統計か自社データか求人票かを確認し、それぞれの前提を揃えてから比較してください。
よくある質問
エンジニアリングマネージャーの年収について、検索でよく調べられている疑問をまとめます。民間企業の数字は母集団が限定されているものが多いため、断定を避けた回答にしています。統計や求人の情報は更新される可能性があるため、2026年10月21日時点で確認できた情報にもとづいていることを、あらかじめご了承ください。回答で使っている数字や定義は、本文で出典を示したものに限っています。
エンジニアリングマネージャーの年収の中央値はいくらですか
公的統計から確認できる中央値は、2026年10月21日時点では見つかりませんでした。厚生労働省の賃金構造基本統計調査にはエンジニアリングマネージャーという職種区分が見当たらず、近い大分類の管理的職業従事者は管理職全般を含む数字のため、そのまま中央値として使うことはできません。民間データでは、Robert Half Japanが50パーセンタイルを1350万円、Geeklyが成約データの中央値を650万円としており、算出方法が違う2つの数字が併存しています。どちらを使うかは、自分がどちらの集団に近いかで判断してください。
エンジニアリングマネージャーの年収2000万円は普通ですか
一般的な相場とは言えません。求人票で2000万円に近い金額が提示される例はありますが、事業の中核を担う技術責任や大規模な開発組織の統括を前提とするポジションが中心です。Robert Half Japanの試算では、エンジニアリングマネージャーの中央値は1350万円で、2000万円に近い帯はより上位のVP of Engineering(中央値1800万円)に近いレンジとされています。2000万円という数字を見た場合は、役職名と業務内容を求人票で確認することをおすすめします。
未経験からエンジニアリングマネージャーになれますか
いきなり未経験から採用される例は多くありませんが、可能性が無いとは言えません。JAC Recruitmentの解説では、一般的にエンジニア経験5年以上とチームリーダーなどのマネジメント経験が求められるとされています。一方で、EM経験者は市場全体で不足しているため、経験そのものが無くてもポテンシャルを見込んで採用する企業があるとも説明されています。チームの意思決定にどう関わってきたかを具体的に説明できるようにしておくとよいでしょう。
エンジニアリングマネージャーとテックリードはどちらが年収が高いですか
両者を公式な統計で比較できる数字は見つかっていません。テックリードは技術面の意思決定に責任を持ち、部下を持たないことが多い一方、エンジニアリングマネージャーは部下を持ち人材育成や組織運営までを担う役割です。役割の範囲が異なるため、肩書きだけで年収の優劣を単純に判断することはできません。求人票の業務内容と提示年収を、個別に確認することをおすすめします。
まとめ
エンジニアリングマネージャーの年収を調べると、「900万〜1200万円が目安」という解説と、「2000万円台」の求人票が同時に見つかりますが、これはRobert Half Japanのパーセンタイル表示、Geeklyの成約データ、求人票の提示額という、算出方法も対象も違う数字を比べているために起きるズレです。厚生労働省の統計にもエンジニアリングマネージャーという職種区分は見当たらず、公的な中央値は確認できていません。
一方で、各調査元の前提を分けて見ると、全国の想定年収は1200万〜1550万円(Robert Half Japanのパーセンタイル)、同社経由の成約実績は650万円前後(Geeklyの中央値)という2つの軸が見えてきます。2000万円台は、事業の中核を担う技術責任や大規模な組織の統括を前提とする上限レンジです。出典のない数字をそのまま信じるより、自分の経験年数や管理人数に近い出典の条件を確認するほうが確実です。
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