転職エージェントでSESばかり紹介される理由と対処法|自社開発への道

転職エージェントに登録したのに、紹介される求人がSESばかりで戸惑っている人は少なくありません。結論として、SESの求人が多く紹介される背景には、IT業界の求人数の偏りとエージェントの収益構造が関係しており、本人のスキル不足が原因とは限りません。この記事では紹介の構造、自分の側で起きがちなパターン、SES以外を引き出す対応、それでも変わらないときの判断基準を整理します。

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転職エージェントの紹介の仕組みについて、厚生労働省が公表する職業紹介事業の手数料資料や人材紹介会社の解説記事、SNS・知恵袋の声にあたって書いています。紹介料率の数字は2026年10月2日に確認したものです。個人の転職体験談は掲載していません。

転職エージェントでSESの求人ばかり紹介されるのはよくあることなのか

転職エージェントの求人紹介に戸惑うエンジニアの声を表すイラスト

SESの求人ばかり紹介されるという悩みは、特定の誰かだけに起きているわけではありません。ITエンジニア429名を対象にした民間調査では、転職エージェント利用者の73.9パーセントが途中で利用を断念し、最大の離脱理由は『希望に合わない求人紹介』で50.2パーセントを占めたと報じられています。希望と違う紹介が起きやすいのは、業界に共通する傾向だといえます。

SESという働き方の仕組みを整理する

SESとはシステムエンジニアリングサービスの略で、自社の社員をクライアント先に常駐させ、技術力や労働時間を提供する準委任契約が中心の業態です。IT業界には元請けから二次請け、三次請けへと仕事が流れる多重下請け構造があり、SES企業はこの構造の中で下流の工程を担うことが多いとされています。まず仕組みを知ると、求人の多さの背景が見えてきます。

希望と違う紹介は多くの利用者が経験している

先の調査結果が示すように、エージェント経由で希望と違う求人を紹介される経験は珍しくありません。担当者のスキル不足や業界知識の不足が一因になることもあれば、エージェントが保有する求人の種類そのものが限られていることも一因になります。原因を一つに決めつけず、両方の可能性を分けて考える必要があります。

  • 紹介された求人が希望条件と合っていない
  • 担当者からの連絡が遅い、または連絡が途絶える
  • 求人の数は多いが同じような案件ばかり紹介される
  • 面談で伝えた希望が次の紹介に反映されていない
  • SESは準委任契約が中心で、クライアント先への常駐が基本になる
  • 案件ごとに常駐先や使用する技術が変わりやすい
  • 元請けから二次請け・三次請けへ仕事が流れる多重下請け構造がある
  • 自社開発企業は採用そのものが少なく、求人数が限られている
  • 社内SEも求人数が少なく、総合型エージェントでは扱いにくい職種とされる
編集部

『自分だけ損な求人を紹介されている』と思い込む前に、業界全体の求人構造を知っておくと落ち着いて対応できます。

転職エージェントがSESを優先的に紹介する3つの理由

転職エージェントが紹介料を受け取る仕組みを表すイラスト

SESが優先的に紹介される理由は、求人数の偏りだけでは説明できません。求人の絶対数、エージェントの収益構造、そして登録時の希望条件の伝え方という3つの要因が重なって起きている現象です。1つずつの要因は小さく見えても、重なることで『SESばかり』という印象を強く与えます。次の項目で要因を分けて見ていきます。

求人数そのものがSESに偏っている

自社開発企業や社内SEは、自社サービスや社内システムの状況に応じて必要なときだけ採用するため、そもそも求人数が少ない職種です。対してSES企業は常駐先の需要に応じて継続的に人員を採用するため、転職市場全体で見ると求人数が多くなりやすい構造になっています。市場に出ている求人の総数自体がSESに傾いていることが、紹介の偏りの土台になります。

紹介料と内定の決まりやすさが優先される

有料職業紹介事業の手数料は厚生労働大臣への届出制で運用されており、上限は求職者の理論年収の50パーセントとする告示が示されています。実務上の相場は理論年収の30から35パーセント程度とされ、エージェントは内定が決まりやすい求人を優先する動機を持ちやすい構造になっています。採用ハードルが比較的低いSESは、この『決まりやすさ』に当てはまりやすい求人です。

希望条件が曖昧なまま進んでしまう

『風通しの良い職場で働きたい』のような希望は人によって解釈が異なり、具体的な条件に落とし込めていないとエージェントも求人を探しにくくなります。希望条件が曖昧なまま初回面談が進むと、エージェントは紹介しやすいSES求人を中心に提案する傾向があるという指摘が複数の解説記事で共通しています。曖昧さが紹介の偏りを後押ししている面があります。

要因内容根拠
求人数の偏り自社開発・社内SEは採用数が少ない各求人媒体・人材紹介会社の解説記事
収益構造紹介料率の上限は理論年収の50パーセント、相場は30〜35パーセント程度厚生労働省公表の届出制手数料資料
希望条件の伝え方曖昧な希望は紹介しやすい求人に流れやすい複数の人材紹介会社の解説記事

SESばかり紹介されるときに自分の側で起きている3つのパターン

SESばかり紹介される原因を自己診断するチェックリストのイラスト

業界構造だけが原因とは限らず、登録や面談の進め方で紹介の結果が変わることもあります。自分の状況が次の3パターンのどれに当てはまるかを確認すると、何を変えれば良いかが具体的に見えてきます。1つだけに当てはまる人もいれば、複数が重なっている人もいるため、まず自分の状況を客観的に整理してから、当てはまる項目から対応を始めることが近道になります。

SESを希望しないと明言していないパターン

『できれば自社開発がいい』という程度の伝え方では、エージェントは候補を狭めずに紹介を進めてしまいます。『SESは希望しない』『客先常駐が前提の求人は辞退する』とはっきり伝えていない場合、紹介の候補からSESが外れることはありません。伝え方の強さが結果に直結します。

総合型エージェント1社だけに登録しているパターン

総合型エージェントは幅広い職種・業界を扱うため、特定職種の求人を保有している比率が特化型と比べて下がりやすくなります。社内SE希望と伝えても、総合型エージェントではSESや客先常駐の求人を紹介されることが多いという指摘が複数の解説記事で共通しています。1社だけに頼っている状態は、選択肢を狭めている可能性があります。

経歴の書き方がSES向けに見えているパターン

職務経歴書に『案件A、案件Bに参画』という形で業務を並べただけだと、成果や専門性が伝わりにくくなります。案件の羅列になっている経歴書は、担当者からも『工程を限定せず何でも対応できる人』という印象で扱われやすく、SES向けの求人と相性が良いと判断されがちです。書き方自体が紹介の傾向に影響します。

パターン起きていること対応の方向性
希望未伝達SES不可を明言していない初回面談で条件を明確に伝える
総合型のみ登録特化型求人を保有していない特化型エージェントを併用する
経歴の書き方案件の羅列で専門性が不明確工程・成果ベースで書き直す
編集部

3パターンのどれか1つだけが原因のこともあれば、複数が重なっていることもあります。表で自分の状況を確認してみましょう。

SES以外の求人を引き出すためにやるべき3つの対応

職務経歴書を見直すエンジニアのイラスト

前の章で確認したパターンに応じて、やるべき対応は変わります。ここでは3パターンすべてに共通して効果が見込める、伝え方・エージェント選び・経歴書の3つの対応を順に説明します。どれも新しいエージェントに登録し直す必要はなく、今使っているエージェントとのやり取りの中で、今日から少しずつ順番に始められる対応です。

初回面談で希望条件を具体的な言葉で伝える

『自社開発がいい』ではなく、『客先常駐が前提の求人は辞退する』『勤務地は自社オフィスかフルリモートに限る』のように、断る基準まで含めて伝えます。紹介された求人がこの基準に合わない場合は、その場で理由を伝えて断ることで、担当者が候補を絞り込みやすくなります。基準を明確にするほど、紹介の精度が上がります。

自社開発・社内SEに強い特化型エージェントを併用する

総合型エージェント1社だけでは、特化型が保有する求人には出会えません。社内SEや自社開発に特化していると公表しているエージェントを別に登録し、総合型と並行して使うことで、紹介される求人の幅そのものを広げられます。1社に絞らないことが、選択肢を増やす一番の近道です。

職務経歴書を工程・成果ベースで書き直す

『案件A、案件Bに参画』という書き方を、担当した工程と成果に分けて書き直します。『要件定義の一部を担当し、仕様の不整合を3件指摘して修正につなげた』のように、工程と行動と結果をセットで書くと、専門性が伝わりやすくなります。案件数の多さより、深さを示す書き方に変えます。

  • 客先常駐が前提の求人は辞退する、と初回面談で伝える
  • 勤務地・雇用形態・必須スキルの条件を具体的な言葉にする
  • 紹介された求人を断るときは理由を添えて伝える
  • 社内SE・自社開発に特化したエージェントを別途登録する
  • 職務経歴書を工程・成果ベースで書き直す
💡 ここだけ押さえる

『伝え方』『エージェントの数』『経歴書の書き方』の3点は、どれも登録済みのエージェントを変えずに今日から始められます。まず全部を少しずつ変えてみましょう。

総合型と特化型、エージェントを比較する軸を整理する

総合型と特化型の転職エージェントを比較して選ぶイラスト

特化型エージェントを併用するといっても、どの軸で選べば良いか分からないという声があります。特定のエージェントをおすすめするのではなく、公表されている条件だけを並べて、総合型と特化型の違いを整理します。どのエージェントが良いかではなく、自分の状況にどちらの型が合うかという軸で選ぶことが前提になります。

総合型エージェントと特化型エージェントの違い

総合型エージェントは職種・業界を問わず幅広い求人を保有し、求人数そのものは多くなります。特化型エージェントはIT・エンジニア職や社内SEなど扱う職種を絞っている分、同じ職種の中での求人の網羅性や担当者の専門知識が強みになりやすいとされています。どちらか一方ではなく、役割分担として併用するのが基本の考え方です。

登録前に確認しておきたいチェックリスト

登録サイトの説明文だけで判断せず、確認すべき項目を決めておくと比較がしやすくなります。扱う職種の範囲、社内SE・自社開発求人の扱いの有無、担当者が同じ業界出身かどうかの3点は、サイトの会社概要やサービス説明に明記されていることが多い項目です。この3点は登録前に確認しておきます。

  • 扱う職種の範囲が総合型か特化型か
  • 社内SE・自社開発求人を専門に扱っているかの表記があるか
  • 担当者がIT・エンジニア業界出身かどうかの表記があるか
  • 非公開求人の扱いについての説明があるか
  • 面談の形式(対面・オンライン・電話)が自分に合うか
比較軸総合型エージェント特化型エージェント
求人の幅職種・業界を問わず広い特定職種に絞られる
社内SE・自社開発求人保有数が少ない傾向専門に扱うと公表している場合がある
担当者の知識幅広い業界を横断して対応同じ業界出身の担当者が多いとされる

それでもSESしか紹介されないときの判断の流れ

エージェントを切り替えるかどうか判断する流れを表すイラスト

伝え方を変え、特化型を併用しても状況が変わらないこともあります。その場合は『担当者を変える』『エージェント自体を切り替える』『SES経由でキャリアを作る』という3つの選択肢を順に検討します。どの選択肢を選ぶかは、転職活動にかけられる時間と、どの条件を優先したいかによって変わるため、焦って1つに決めつけない姿勢が大切です。

担当者を変える・エージェントを切り替える基準

希望条件や転職の軸を再度共有しても改善が見られない場合は、担当変更を申し出る基準の一つになります。担当変更後も同じ傾向が続く場合は、そのエージェント自体が保有する求人の幅に限界があると判断し、別のエージェントへ切り替える目安になります。1回の面談で判断せず、2回程度のやり取りを目安に見極めます。

SES経由でキャリアを作る選択肢も残しておく

SESを避けることだけが正解とは限りません。上流工程に関わる案件を選んで経験を積み、業務外の学習や制作物で専門性を示せば、SES経由でも自社開発企業や社内SEへ転職しているエンジニアがいると複数の解説記事で紹介されています。今すぐ避けるか、経験を積んでから動くかは選べる選択肢として持っておきます。

  • 希望条件を再共有しても改善しない場合は担当変更を申し出る
  • 担当変更後も同じ傾向が続く場合はエージェント自体を切り替える
  • 切り替え後は希望条件と断る基準を最初から明確に伝える
  • SES経由で経験を積んでから動く選択肢も残しておく
編集部

エージェントを切り替える判断は、1社だけの対応で決めつけず、2回程度のやり取りを振り返ってから下すと後悔しにくくなります。

⚠️ 注意したい点

『必ず自社開発に転職できる』という保証はありません。SES以外の求人数自体が少ないため、対応を変えても紹介数が限られることは前提として理解しておく必要があります。

よくある質問

SESの求人ばかり紹介されるのはスキル不足が原因ですか

スキル不足だけが原因とは限りません。自社開発や社内SEはそもそも求人数が少なく、エージェントの収益構造上、内定が決まりやすい求人が優先されやすい事情があります。希望条件を具体的に伝えていない場合や、総合型エージェント1社だけに登録している場合も、SESばかり紹介される結果につながります。まずは自分の登録状況と伝え方を見直すことから始めます。

転職エージェントは何社まで登録して良いですか

社数の上限を定めたルールはなく、総合型と特化型を組み合わせて2から4社程度を併用する進め方が解説記事では多く紹介されています。登録数が多いほど、紹介される求人の種類も広がりやすくなります。一方で面談や連絡のやり取りが増えるため、自分が対応できる範囲で社数を決めることが前提になります。

SESを一度でも経験すると自社開発に転職できなくなりますか

そうとは限りません。上流工程に関わる案件を選んで経験を積み、業務外の学習や制作物で専門性を示すことで、SES経由から自社開発企業や社内SEへ転職しているエンジニアがいると複数の解説記事で紹介されています。経験した案件の内容を工程・成果ベースで整理し直すことが、次の転職活動に活かせる準備になります。

担当者を変えてほしいとエージェントに伝えても良いですか

伝えて問題ありません。希望条件や転職の軸を再度共有しても紹介の傾向が変わらない場合、担当変更を申し出るのは利用者として自然な行動です。担当変更後も同じ傾向が続く場合は、そのエージェント自体が保有する求人の幅に限界があると判断し、別のエージェントへの切り替えを検討する目安になります。

まとめ

転職エージェントでSESの求人ばかり紹介されるのは、本人のスキル不足とは限らず、求人数の偏りと紹介料を中心とした収益構造が関係しています。希望条件を具体的に伝え、総合型と特化型のエージェントを併用し、経歴を工程・成果ベースで書き直すことが、SES以外の求人を引き出す現実的な対応です。状況が変わらない場合は、担当変更やエージェントの切り替えも選択肢として持っておきましょう。

社内SEへの転職を具体的に考えている場合は社内SE転職とエージェントの使い方を解説した記事、SESからWeb系自社開発企業への転職を考えている場合はSESからWeb系企業への転職の違いと準備を解説した記事も参考にしてください。未経験からの転職でエージェントの使い方に不安がある場合は未経験エンジニアの転職エージェント活用ガイド、SES自体を辞めたいと感じている場合はSESを辞めたいと感じたときの転職の進め方を解説した記事もあわせてご覧ください。