組み込みエンジニアの年収はなぜ低い?公的データで理由と対策を解説

組み込みエンジニアとして働くなかで、求人サイトの年収を見て「思ったより低い」と感じたことはないでしょうか。組み込みエンジニアの年収については経済産業省の調査や転職サービス各社の集計などいくつもの数字が出回っていますが、平均か中央値か、何を対象にした数字かが示されないまま紹介されている記事が少なくありません。この記事では公的なデータで確認できる範囲を明示したうえで、年収が上がりにくい構造的な理由、未経験から組み込みエンジニアに転職する場合の注意点、年収を上げる現実的な選択肢までをまとめて解説します。

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エンジニア転職ラボ編集部IT・エンジニア転職の解説メディア

組み込みエンジニアの年収について、経済産業省と厚生労働省の公表資料、複数の転職支援メディアの解説記事にあたって書いています。年収額は出典と調査時点を明記できたものだけを掲載しており、2026年9月23日時点で確認した情報にもとづきます。個人の転職体験談は掲載していません。

組み込みエンジニアの年収はなぜ「低い」と言われるのか

組み込みエンジニアという職種を表すイラスト

組み込みエンジニアの年収が低いと言われる背景には、Web系やSaaS企業のエンジニアと比べたときの伸びしろの違いがあります。組み込みエンジニアの年収は経験を積むごとに緩やかに上がる一方、Web系のように急成長企業の昇給や株式報酬で年収が短期間に跳ね上がるケースは少ないとされています。同じ「エンジニア」という括りで比較されるため、実際より低く見えやすい面もあります。

組み込みエンジニアとは何を指す職種か

組み込みエンジニアとは、家電や自動車、医療機器、産業機器といった機器の内部で動くソフトウェアや制御プログラムを開発する技術者を指します。スマートフォンやパソコンのアプリを開発するWeb系・アプリ系のエンジニアとは開発対象が異なり、C言語やC++、ハードウェアの知識が求められる点が特徴です。担当する製品や工程によって「制御系エンジニア」「ファームウェアエンジニア」などの呼び方も使われます。

「年収が低い」という声の多くはWeb系との比較から来ている

検索結果や転職メディアの記事を見ると、組み込みエンジニアの年収の低さはWeb系エンジニアとの比較で語られることがほとんどです。Web・クラウド系の求人が示す年収レンジは上限が高く設定されていることが多く、平均同士ではなく上限同士を比べて「低い」と感じているケースも見られます。比較するときは、平均的な水準同士を並べているかを確認する必要があります。

公的データで組み込みエンジニアの年収を確認する

組み込みエンジニアの年収データを確認するイラスト

組み込みエンジニアだけを対象にした年収の公的統計は、実は存在しません。厚生労働省の賃金構造基本統計調査では、システム開発に携わる職種は「ソフトウェア作成者」という区分にまとめられており、組み込み・Web・汎用機系を分けた年収データは公表されていません。数字を探すときは、まずこの前提を押さえておく必要があります。

経済産業省の調査に見る組み込み系職種の年収

経済産業省は2017年8月21日に「IT関連産業の給与等に関する実態調査結果」を公表しました。この調査を伝える複数の報道によると、組み込みソフトウェアの開発・実装を担うSE・プログラマの平均年収は603.9万円だったとされています。公表から約9年が経過している点、平均値であり中央値ではない点に注意して参照してください(経済産業省公表資料、2026年9月23日確認)。

厚生労働省の統計に「組み込みエンジニア」という区分は存在しない

日本標準職業分類と厚生労働省編職業分類では、システム開発の職種を「ソフトウェア作成者」として扱い、その中でWeb・オープン系、組み込み・制御系、汎用機系のように扱うシステムの系統で細分化すると説明されています。つまり賃金構造基本統計調査の中位数(中央値)は「ソフトウェア作成者」全体の数字であり、組み込みだけの中央値を公的統計から直接取り出すことはできません。転職サービス各社が示す数字も、多くは自社の登録者や求人データを母集団にした独自集計です。

数字の種類出典母集団平均か中央値か
組み込みSE・プログラマの年収(2017年)経済産業省調査対象企業の回答ベース平均値(2017年時点)
ソフトウェア作成者の給与厚生労働省(賃金構造基本統計調査)ソフトウェア作成者全体(組み込みを含む広い括り)中位数を含む複数指標
転職サービス各社の集計各社の公表資料各社の登録者・求人データ明記されないことが多い
  • 年収の数字が平均か中央値かを明記しているか
  • 調査の実施年や公表年が書かれているか
  • 調査対象の母集団(従業員か経営者か、正社員かなど)が示されているか
  • 公的機関の一次資料へのリンクや出典名があるか
  • 製品分野や業界を分けずに一括りにしていないか
編集部

組み込みエンジニアの年収は「何を数えたか」で数字が大きく変わります。記事を読むときは、平均か中央値か、いつの調査かをまず確認しましょう。

年収が上がりにくくなる構造的な理由

組み込みエンジニアの年収が伸びにくい構造を表すイラスト

組み込みエンジニアの年収が伸びにくいと言われる理由は一つではなく、業界構造と製品分野の両方が関係しています。特に大きいのが、開発を委託する企業から下請け企業へと発注が連なる多重下請け構造で、商流が深くなるほど現場のエンジニアに残る単価が薄くなるという指摘です。加えて、扱う製品によっても水準は大きく変わります。

多重下請け構造による単価の目減り

組み込みソフトウェアの開発は、メーカーから一次請け、二次請けへと業務が発注される多重下請け構造になりやすい業界です。商流が深くなるほど各企業のマージンが積み重なり、実際に開発を担当するエンジニアが所属する企業に届く単価が小さくなるとされています。同じ製品の開発に携わっていても、どの階層の企業に所属しているかで年収に差が出やすい構造です。

扱う業界・製品によって水準が大きく変わる

組み込みエンジニアと一口に言っても、自動車や医療機器のように高い信頼性が求められる分野と、家電や量産品のように価格競争が厳しい分野とでは、企業の利益率も年収水準も異なります。自動車や医療機器、産業機器メーカーの直系企業は年収水準が高めとされる一方、量産型の家電や汎用製品を扱う下請け企業では低めになりやすいとされています。求人を比較する際は、職種名だけでなく扱う製品分野も確認してください。

商流の位置よくある特徴年収への影響
元請け(メーカー直系)仕様策定など上流工程に関われる相対的に高めになりやすい
一次請け設計から実装まで幅広く担当元請けよりやや下がる傾向
二次請け以下実装やテスト工程が中心になりやすい単価の中抜きの影響を受けやすい
  • 元請けか下請けか、何次請けにあたるか
  • 直接の取引先がメーカーか別のIT企業か
  • 担当する製品が量産品か高付加価値品か
  • 案件終了後の待機や契約形態の扱い
  • 年収レンジの根拠になっている等級や評価制度
💡 ここだけ押さえる

商流の深さと年収は連動しやすい一方、必ずしも一致するわけではありません。同じ二次請けでも、直接の取引先が大手メーカーか別のIT企業かで条件が変わります。

年収以外に「きつい」「やめとけ」と言われる背景

組み込みエンジニアの働き方の課題を表すイラスト

組み込みエンジニアの検索では「やめとけ」という言葉が一緒に調べられることが多く、その理由は年収だけでなく働き方にもあります。物理的なハードウェアを扱う工程があるため在宅勤務が難しく、工場や製造ラインの近くへの出張・配属が発生しやすいことが主な理由として挙げられています。年収と働き方の両方を見て判断する必要があります。

勤務地や働き方の自由度が低くなりやすい

組み込み開発では、実機での動作確認やハードウェアとの結合テストが欠かせないため、開発の最終段階では工場や生産拠点への出張、場合によっては長期の配属が発生します。Web系エンジニアのように完全リモートで完結する働き方は難しく、勤務地の自由度が低い点は転職前に確認しておきたいポイントです。企業によって出張の頻度や在宅勤務の可否は大きく異なります。

成果がユーザーから見えにくく評価されにくい

組み込みソフトウェアは製品の内部で動くため、利用者がその存在を意識することはほとんどありません。Webサービスのように利用者数やアクセス数で成果を示しにくく、社内でも開発の貢献度が可視化されにくいという不満が指摘されています。評価制度が工程や役割ごとに明確に定められているかどうかは、年収以外に確認しておきたい要素です。

  • 在宅勤務がしにくく出張や配属が発生しやすい
  • 納期やバグ修正対応で残業が発生しやすい
  • 成果が製品の内部に隠れて評価されにくい
  • 業務内容が固定化しやすく担当領域が広がりにくい
  • C言語やハードウェアなど学習コストが高い
編集部

年収の数字だけでなく、出張の頻度や在宅勤務の可否、評価制度まで確認すると、入社後のギャップを減らせます。

組み込みエンジニアが年収を上げるための現実的な選択肢

組み込みエンジニアがキャリアを描くイラスト

組み込みエンジニアが年収を上げる方法は、社内でキャリアを積む方法と、環境を変える方法の大きく2つに分かれます。上流工程や仕様策定への関与、IoTや車載分野など需要の高い領域への専門特化、マネジメントへの移行が社内でのキャリアアップの主な選択肢とされています。環境を変える場合は、業界や企業を選び直す転職が中心になります。

社内で上流工程・マネジメントへ進む

組み込みエンジニアの年収は、実装工程だけを担当するより、要件定義や仕様策定といった上流工程に関わるほうが上がりやすい傾向があるとされています。プロジェクト全体を管理するマネジメント職への移行や、IoT・車載・自動運転など将来性が高いとされる分野の専門知識を身につけることも、年収アップにつながる方向性として挙げられています。どちらも数年単位で経験を積む必要がある選択肢です。

給与水準の高い業界・企業への転職を検討する

社内でのキャリアアップに時間がかかる場合、給与水準が高いとされる業界や企業への転職も選択肢になります。自動車や医療機器メーカーの直系企業、外資系の半導体・電子部品メーカーなどは、量産型の家電・汎用製品を扱う下請け企業より年収水準が高いとされています。転職先を比較する際は、前述のとおり年収の数字が何を根拠にしているかも確認してください。エンジニアの年収を中央値から捉え直す考え方は、エンジニアの年収の中央値を解説した記事でも詳しく整理しています。

業界・製品分野年収の傾向理由とされる点
自動車(車載)高めとされる安全性要求が高く技術者の専門性が評価されやすい
医療機器・産業機器高めとされる規制対応や高い信頼性が求められる
家電・量産品低めになりやすい価格競争が厳しく下請け構造になりやすい
  • 要件定義や仕様策定など上流工程への関与を増やす
  • IoTや車載、自動運転など需要の高い分野を専門にする
  • マネジメント職への移行を目指す
  • 自動車・医療機器など給与水準が高いとされる業界へ転職する
  • 英語力を身につけ外資系メーカーを選択肢に加える

未経験から組み込みエンジニアへ転職するときの年収の注意点

未経験から組み込みエンジニアへ転職する準備をするイラスト

未経験から組み込みエンジニアを目指す求人は増えていますが、入社直後の年収は経験者と同じ水準にはなりません。未経験可の求人の多くは研修制度とセットになっており、入社後数年は学習と実務を並行しながら年収が緩やかに上がっていく設計になっていることが一般的です。未経験転職を検討する際は、年収の初期水準と将来の伸び方を分けて確認する必要があります。

未経験可の求人で実際に求められる基礎

未経験可としている組み込みエンジニアの求人でも、入社後にゼロからすべてを教える前提の企業は多くありません。C言語の基礎文法や論理的思考力、電子回路の初歩的な知識を独学やスクールである程度身につけたうえで応募することが、選考を通過しやすくする条件として挙げられています。応募前にオンライン教材や書籍で基礎を学んでおくと、面接でも学習意欲を具体的に示せます。

入社直後は年収が下がりやすい理由と対策

未経験からの転職では、前職の年収より入社直後の年収が下がるケースが珍しくありません。研修期間中は生産性がまだ低いとみなされやすく、経験者と同じ等級や評価に位置づけられないことが年収が下がる主な理由です。転職エージェントに相談する際は、研修後にどのくらいの期間でどの程度年収が上がる見込みかを具体的に確認しておくと、入社後のギャップを減らせます。未経験からの転職エージェントの選び方は未経験エンジニアの転職エージェントを解説した記事、インフラ系との年収比較は未経験からインフラエンジニアへ転職する場合の年収を解説した記事も参考にしてください。

  • C言語など基礎的なプログラミングの学習
  • 電子回路やハードウェアの初歩的な知識の習得
  • 入社後の研修制度と期間の確認
  • 研修後に年収がどの程度上がる見込みかの確認
  • 出張や勤務地の条件が希望と合うかの確認
⚠️ 注意したい点

未経験可の求人ほど、入社直後の年収だけでなく、研修後にどのくらいの期間でどの水準まで上がるのかを面接で必ず確認してください。

編集部

未経験からの転職は年収が一時的に下がることもありますが、研修制度の中身と将来の伸び方をセットで見れば、判断材料が揃います。

よくある質問

組み込みエンジニアの年収について、検索でよく調べられている質問をまとめました。個別の条件によって事情は変わるため、一般的な考え方としての回答です。以下は2026年9月23日時点で確認した情報にもとづいており、個人の転職体験談は含まれていません。詳しくはエンジニアの年収の中央値を解説した記事も参考にしてください。

組み込みエンジニアの平均年収はいくらですか

公的統計には組み込みエンジニアだけを対象にした年収データが存在しないため、単一の数字で断定することはできません。参考になる一次情報としては、経済産業省が2017年に公表した「IT関連産業の給与等に関する実態調査結果」があり、組み込みソフトウェアの開発・実装を担うSE・プログラマの平均年収は603.9万円とされています。ただしこれは2017年時点の平均値であり、約9年前のデータである点に注意が必要です。転職サービス各社が示す数字は、各社の登録者や求人データにもとづく独自集計であり、算出方法が明記されていないことが多いため、公的統計とは分けて捉えてください。

組み込みエンジニアの年収の中央値はいくらですか

厚生労働省の賃金構造基本統計調査には職種別の中位数(中央値)を含む統計表がありますが、区分は「ソフトウェア作成者」という広い括りであり、組み込みエンジニアだけを抜き出した中央値は公表されていません。ソフトウェア作成者にはWeb系や汎用機系のエンジニアも含まれるため、組み込みエンジニア単独の中央値を公的統計から直接調べる方法は今のところありません。中央値と平均値を混同した記事も見られるため、数字を見るときはどちらの指標かを必ず確認してください。

組み込みエンジニアからWeb系エンジニアに転職すると年収は上がりますか

組み込みエンジニアからWeb系やSaaS企業のエンジニアに転職して年収が上がったという個人の体験談は複数見られますが、必ず上がると断定できるものではありません。転職先の企業規模や事業の成長段階、担当するポジションによって条件は大きく異なります。組み込みで培ったC言語やハードウェアの知識がそのまま評価されるとは限らず、Web系の開発言語やフレームワークの学習が別途必要になる場合もあります。年収だけでなく、働き方や評価制度の違いも比較したうえで判断してください。

組み込みエンジニアは未経験からでも年収を上げていけますか

未経験から組み込みエンジニアになった場合、入社直後の年収は経験者より低い水準からのスタートになるのが一般的です。研修制度が整った企業では、実務経験を積みながら数年かけて年収が上がっていく設計になっていることが多いとされています。将来的に年収を上げるには、上流工程への関与やIoT・車載分野など需要の高い領域への専門特化、あるいは給与水準が高いとされる業界への転職が現実的な選択肢です。入社前に研修後の年収の伸び方を確認しておくと、入社後の見通しを立てやすくなります。

まとめ

組み込みエンジニアの年収が低く感じられる背景には、Web系との比較のしかたと、多重下請け構造や扱う製品分野による水準の違いという複数の要因が重なっています。公的統計には組み込みエンジニア専用の区分が無いため、経済産業省の調査など出典が明確な数字を、平均か中央値か、いつの時点かとセットで確認することが年収を正しく把握する第一歩です。未経験からの転職では入社直後の年収だけでなく、研修後の伸び方や商流の深さまで確認したうえで判断してください。